第17章 岐路(Ⅱ)
ガキってまさかそれ、あたしのこと…!?
こめかみのあたりがカッと熱くなった。
「別に面倒みてもらわなくていい!あたしだってごめんよ!」
思わず声を荒げ、フンとそっぽを向く。それから少し遅れて、ローの言葉にショックを受けている自分に気づいた。
……やっぱりね。
あたしは何を期待してたんだろう。
考え直してくれたのかななんて、ちょっとでも思ったあたしが馬鹿だった。
思い出してみればローは再会した時も、一つも嬉しそうになんかしてなかったじゃない。むしろ迷惑そうに、鬱陶しそうに、ずっと突き放していた。
──結局、パンクハザードに残すことはできないから、仕方なく一緒にいるだけで、本当はあたしを連れて行きたくないのだ。
話す内に、彼の態度を思い出してきて、さっきナミとロビンと話していた時のドキドキは綺麗さっぱり跡形もなく消え去った。何をそんなに浮き足立ってたのか、自分でも分からなくなっちゃった。
「…あたしだって好きでここまできたわけじゃないんだから。帰りたいと思ったことだって何度もあるのに」
それでも、ここまできたのは。
こんなところまで、一人できたのは──。
…なんて、あたしの繊細で切ない想いが、隣の鈍感男に届くわけもなく。
「…思ったならそん時に帰りゃ良かったじゃねェか」
ぼそりと聞こえてきた呟きに、あたしは彼に向き直って顔を顰める。
「ねぇ、なんか言った!?」
「…」
やれやれと黙り込む姿がいやに憎たらしい。
ほんと、どうしてやろうかこの男。
乙女心というもんをまるで分かっちゃいないんだから。
やっぱり、気持ちを伝えるなんて夢のまた夢だ。
余計なこと言ったら今すぐにでもこの船を降ろしかねない。この人なら。
あたしは盛大にため息をついた。