第7章 最悪と最善
物陰から船上をのぞいて、あたしは驚いてしまった。
海賊、ではなかった。
後方遠くに見える船、あれは。
「「「海軍だあああ!!!!」」」
ドォォォオオオオオン!!!
海賊たちの悲鳴と共に、2発目の爆音が鳴り響く。そして凄まじい揺れ。
「うわぁっ」
例によってよろけたところを、マリーに支えてもらいながら、必死で状況を把握しようと努める。
──後方に海軍。
問答無用で海賊を撃破しようとしている。
対して海賊。
船は激しく損傷。
てんやわんやで応戦。
…いや、進路を変更しようとしてる?
──はっ、勝ち目ないと悟って、しっぽ丸めて逃げるつもりか!
たしかに、海軍船は遠目にもこの船より立派。砲撃戦なんてしたら万に一つも勝てそうにない。
あたしが海賊だったら一も二もなく"逃げる"を選択しただろう。
だけど、あたしは海賊でもなければ、海軍に追われるような身でもない!逃げられちゃ困る!
だって、今のあたしたちにとって海軍船は希望の光よ。そりゃ今はバンバン撃たれちゃってるけど、捕虜がいると分かれば保護してくれるはず。
「ま、マリー!逃げるのとめなきゃ!海軍に助けてもらおう!」
慌ててマリーに詰め寄ると、彼は思慮深げに視線を落として何か考えているようだった。
そして、すっと目を細めて顔を上げる。