第7章 最悪と最善
そう言ってすっくと立ち上がるマリー。
何でまたそんなに冷静??
そういえば捕まった時も冷静だったな。…じゃない!!
「ちょっ!?う、わっ」
マリーは縄が外れて自由になった腕でナーティとあたしをぐいと引き起したのだった。
いつのまに外したの?なんて聞く間も無く、あたしたちの縄もほどいていく。
「お前、ほんと卒がねぇな」
「どうも」
ナーティの感心した声を軽く受け流し、マリーは何のためらいもなく部屋にあるたった一つのドアに向かう。
「ちょっと待って!いつもドアの前に見張りがいるはず…ってあれ?いない??」
「影がなくなってた」
はぁ、なるほど。
しれっと言うマリーをぽかんと見つめて、あたしはもうこういう時のマリーに驚かない、と心に決めた。
この人はあたしの何歩も先のことを考えてるんだ。いちいち驚いてたら頭が痛くなっちゃう。
考えるのはマリーに任せて、あたしはあたしに出来ることをしよう。
──そうだ。
マリーとナーティが走り出そうとしてるのを見て、後ろを振り返る。
「皆さん!今が脱出のチャンスみたいなのでついて来てください!」
マリーの考えてることはちっとも分かんないけど、ついて行けば間違いないから。
マリーが脱出できるって言うなら、多分そうなんだろう。
ナーティが小声で「お人好し!」と囁いたけど、だって仕方ないじゃない。ここにいたら助かる道なんてないのに、見過ごすことはできない。
一緒に捕まっていた人たちが顔を見合わせてぞろぞろと立ち上がってくるのを見てから、あたしは2人のあとを追いかけるのだった。