第15章 生きる意味
「おっと!乱暴だな、お花ちゃん」
「(彼らの知ってる、私に関しての秘密を教えてほしかった。けど…やっぱり耐えられない!)」
「顔まーっかにさせちゃって。初々しいところがまた可愛いね」
「(逃げる…!!)」
私は本を投げ捨て、天敵に狙われる兎の如く、全力疾走で図書館を走り去った。
「──やれやれ、行っちゃったか。ま、ちょっと生娘には刺激が強すぎたのかもねえ。"叔父さん"が書いたこの本。悪くないと思うんだけど…。でもま、所詮、傍流は傍流。くだらないよね」
そう言ってライトは本を破り、燃やした。
「──ボクは、許さないよ。」
ライトくんは何故か、私に関する何かを知っている風だった。もしかすると人間じゃない事がバレたのかも知れない。
どうしてこんな運命に巻き込まれてしまったのだろう。私が何をしたと言うのだろう。一体何がキッカケで…。そこまで考えたところでハッと思い出す。
そうだ…全ての元凶は──"アイツ"だ。
夢の中で正体不明の奴に呪いを掛けられていなければ下界に来る事もなかった。学校でライトくん達に出会うこともなかった。
何が試練だ。何が幸せを願うだ。勝手に呪いを掛けておいて何が特別な者から与えられる愛を手に入れろだ。
こんなに胸が痛くて苦しいのも、死に怯えて過ごすのも、全部そいつのせいだ。それまで私の世界は正しく回っていて、日常も安定していた。
けれど呪いを解くために下界に来て、ライトくんと出会った。しかも相手はヴァンパイア。私にとって関わってはいけない種族だった。
きっと天使だって知られたら、ライトくんは私の血を吸い尽くす。今以上にもっと、酷い事をされるかもしれない。
もし魔族と繋がってしまったら、天使としての自分は消えてしまうかもしれない。天使じゃなくなった私に何の価値があるというの?ただの"ヒト"になった私を…誰が必要とするの?誰が愛してくれるというの?そんな人誰も…。
"好きだよ、お花ちゃん"
…絆されてなんかあげない。堕ちてなんかあげない。だってライトくんが私に向ける愛は本気じゃないもの。私が欲しいのは一緒に呪いを解いてくれる特別な者の愛だけ。
でもライトくんはどこまで知っているんだろう。私はそれを確かめたかった…。
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