第11章 ヴァンパイアの花嫁
「(あの赤い糸はまさか…)」
叔父と呼ばれた彼にも見えたのか、とても驚いた顔を浮かべた後、憎らしげに私達を睨んだ。
「何かの間違いに決まっている。魔族と天使が恋に落ちるなど前代未聞だ。アヤト、本気でその女の呪いを解く気なのか…?」
「コイツの『特別な者』はオレ以外ありえねえ。オレ達に呪いは解けない?勝手に決め付けてんじゃねぇよ。オレは必ずコイツの呪いを解いてコイツを呪った奴をぶっ飛ばす」
「アヤト…貴様は禁忌を犯したのだ。穢らわしい天使と繋がったことをあの方は決して許さないぞ」
「うるせぇな。コイツが天使だから何だ?魔族を愛しちゃいけねーっつう掟を破ってまでコイツはオレを選んだ。ならオレも覚悟決めてコイツの想いを受け入れるべきだろ」
「…後悔するぞ」
「しねーよ」
アヤトくんが自信満々に答える。
「ンで?コイツを呪った奴は誰だ?」
「…■■■■だ。」
「「?」」
私とアヤトくんは首を傾げる。
「あの…今なんて?」
「もう一度伝えたところで"あの人"の名を聞き取る事はできない」
彼が"あの人"と呼ぶ人物の名を口にした途端、ノイズのような雑音で遮られる。
「精々もがき苦しめ憎き天使よ。貴様もいずれ母親と同じ最期を遂げることになる。呪いが貴様自身を蝕み続け、死へと近づくカウントダウンに怯えながら生き抗うと良い…!」
「っ…………」
「ビビんな」
「アヤトくん…」
「必ず呪いは解く。オレ様を信じろ」
「うん…!もちろんアヤトくんを信じる!」
どんなに脅そうと私は持ち堪える。だってアヤトくんが隣にいて、私を守ってくれる。
「私は必ずアヤトくんと一緒に呪いを解きます。あの人が与えた試練を二人で乗り越えてみせます。だからもう…怖くなんかない!」
「……………」
彼の瞳に激しい憎悪が孕んだのを見た。
「やはりあの女と同じで忌々しい…」
鋭い眼光で顔を歪めながらこちらを睨んでいるが、今の私には全く利かない。
「アヤトくん」
「あぁ」
アヤトくんがこちらに視線を向けたのを見て、私はそっと目を閉じた…。
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