第11章 ヴァンパイアの花嫁
ずっと願ってた、貴方が欲しいと。
アヤトくんが私を好きになればいいと。
「(最初はいつも私をいじめてくるアヤトくんが嫌いだった。無理やり牙を立てて痛いって言ってもやめてくれないアヤトくんが怖くて仕方がなかった。)」
それ以前に魔族と関わることが嫌だった。私の中に流れる血が魔族の血で穢れるのが怖かった。血を吸われ続ければ、堕ちていくことは分かっていた。
堕ちたくないのに容赦のない吸血。繰り返されると痛みと恐怖。ずっと彼から狙われる悪夢から目覚めたかった。
「(でもアヤトくんの傍にいることで、彼の中にある優しさに触れて、私の心にも変化が起きた。)」
この人に愛されたいと。それと同時に心の奥底に眠っていた醜い感情にも戸惑った。
「(ユイちゃんと仲良くしてるのを見るだけでドロドロとした黒い感情が芽生えて、それが嫉妬からくるものだと知った。)」
それでもアヤトくんはこんな私でも受け入れてくれた。それが嬉しくてもっとアヤトくんに惹かれていく自分がいた。
「(でも好きになればなるほど、不安が膨れ上がるばかりだった。)」
アヤトくんは天使の力が欲しいが為に私を好きだと言っているのかも知れない…と。私が既にアヤトくんに堕ちているのを見越していて、それで偽りの愛を伝えてくれているのではないかと思ってた。
「(私は単純で甘っちょろいから…。すぐにアヤトくんからの好意を本気にしちゃう。)」
だから絶対にアヤトくんから先に私が好きだと言わせたかった。アヤトくんとの繋がりを結ぶために。私を…一人の女の子として愛してもらうために。
「なぁメグル、今ここで返事聞かせろ。まぁオマエの答えなんてとっくに知ってるけどな」
「…私のこと、本気で好き?ちゃんと一人の女の子として愛してくれる…?」
「本気で好きじゃなきゃ言わねーよ。このオレ様をオマエが堕としたんだぜ。責任とってオレに愛されやがれ」
じわりと涙が浮かぶ。目頭が熱くなって、視界がぼやける。でもアヤトくん以外の人の前では泣かないって決めた。
からその代わり、精一杯の笑顔で答えた。
「うん…私も…私もアヤトくんが好き!」
当然だと言うようにアヤトくんは笑う。その時、赤い糸のようなものが現れ、私とアヤトくんを繋いだ。
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