第15章 執念
「次はちゃんと帰ってすぐに書いてくださいね」
「はーい!!」
保健室まで追いかけてきた小松田さんの持ってきた入門表に2人分のサインして送り出した後に、七松は善法寺に花街で起こったことを話した。
「そうか…。花街の生まれとなるとやっぱり顔見知りの1人や2人いたか。」
「だがよ、その女全く若月を家族みたいな扱いしなかったんだよ。まるで…」
「小平太、それ以上は…」
と、七松の言葉を遮る善法寺は怪我の手当てをして泣き疲れたのかすっかり眠ってしまった彼の頭をそっと撫でた。
「…若月のやつ、相当辛い生活をしてたんだな。」
「あぁ……。」
「ん?なんだ伊作、何か思うことでもあるのか?」
「うん…。ちょっと心配でね。」
と、彼の頭を撫でながら黙り込んだ。
彼は寝ながら時々顔をしかめたりうなされたりを繰り返していた。
「…若月、また学園長を狙ったりしないよね?」
「…ッ!そんなこと…」
「もちろん、僕らがそんなことさせない。ただ…家族に会って、自分のせいで身内が死んだなんて言われたら…また」
七松は、善法寺の言葉になにも言えなくなった。
七松もいつもの勢いがなくなってしまった。善法寺は彼の頭をまた優しく撫でる
「…君は、もう自由になってもいいんだよ。」
善法寺がそんなことを言う。
すると、七松が何かを感じたように立ち上がり保健室の襖を開けた。
しかし、そこには誰もいなかった
「どうした?」
「いや、今誰かが聞いていたような…」
周りをキョロキョロする七松を廊下の陰から確認をしている影は紫の制服を着ていた。