第15章 執念
女を脅して追い返した潮江と彼の近くにずっといた七松
七松は女がいなくなってすぐに彼に駆け寄り傷ついた体を優しく抱き上げた。
『…ど、して…』
「どうしてじゃねえ!お前が誰かに連れて行かれたと思ったら…あの女は、お前の…?」
『…。』
「…小平太、とりあえずすぐに学園に戻れ。」
「あぁ。私が若月を連れて帰るから文次郎は長治とキリ丸に…」
七松が彼の身体を抱き上げて連れて行こうとした瞬間
彼は七松の着物をギュッと握った。肩を震わせて徐々に嗚咽が聞こえてきた。
『うっ…ぅぅ、ぅえ…、ひっ…う、ぁ…あぁ…ぁ、あ゛あああああーーーー!!!!』
何かが彼の中で弾けたように、彼は大粒の涙と共に声を上げて泣き始めた。
先日のドクタケ忍者と戦った時の泣き方と明らかに泣き方が違う彼に潮江と七松はお互いに顔を見合わせた。潮江は彼に背を向けて周りをキョロキョロ見渡し始めたが、七松は自分の着物を掴んだまま大泣きしている彼をギュッと抱きしめてから、着ていた羽織を彼にかけて立ち上がった。
七松は、泣いている彼を抱えながら極力人通りのない山道を通りながら学園を目指して走っていく。
***
「おや?おかえりなさ…あれ?由利君どうしたんですか?」
「あぁ小松田さん入門表は後で書くから!」
「えぇ!?困りますよ!!七松君!!」
学園に着くなり事務員の小松田さんに捕まりそうになった七松だったが彼の素早さが勝り彼を一応振り切りダッシュで保健室に向かった。そして、保健室の着くや否や襖をスパーン!!と勢いよく開けた。
「おーい!!伊作!!居るかーー!?」
「うわぁあ!!!小平太!!居るけど保健室は静か、に…?って若月!?どうしたの?!」
「話はあとだ、先にけがの手当て頼む!」
「…ッ!あぁ、分かった!!」
と、伊作はいろいろ察したようで若月を抱える七松を保健室にいれた。