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【グノーシア】【短編集】宇宙を漂う船の中で

第6章 言ノ葉【沙明】


ごめんなさい。ごめんなさい。
あの空間にいるのが耐えられなくて、一言だけ言って出てきてしまった。
私のくだらない嫉妬のせいで、セツを傷つけてしまっているかもしれない。そんなの私の中で自己完結させるべきもので、外に出してはいけない。私が、一番わかっているはずだったのに。
泣き顔を見られたくなくて、全速力で共同寝室へ走る。
中には誰もいなかった。丁度いい。
自分の個室の扉を開けて、中で一人背中を丸め、声を押し殺してすすり泣く。
めんどくさいかもしれない。でも、これが私なのだ。
一目惚れだった。あんな危機迫る状況の中で動揺して上手く動けなかった私を、腕を引っ張って助けてくれた。
セツにはもちろん感謝しているけど、私にとっては彼が恩人で。
好きにならないわけがなかった。
でも、彼は私よりもセツの方が好きなんだろうな。それだけの理由で、セツを遠ざけていた。
聞いて呆れる。なんて自分勝手なんだろう。
でも、私は好きな人の幸せを願えるほど、出来た人間じゃないから。どうしても、彼に振り向いて欲しいと思ってしまう。
沙明、私は貴方が好きだよ。
でも、言えない。言ったらきっと貴方を困らせてしまう。
彼のことなんて好きにならなければよかった。
どうせ叶わないと、どうせ敵わないと。
ずっと頭で考えていた。
今は、誰にも会いたくない。誰も私を見つけないで。
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