第6章 言ノ葉【沙明】
「よォおふたりさん。俺も混ぜてくれよ」
沙明。何の用だ……
ツバサがいっそう話さなくなってしまった。
「沙明、何も用がないなら話しかけないでくれ」
「ンー?俺ぁ救世主の顔を見に来たっつー用があんだよ。お前のことだぜ、セツ」
「どうでもいい。どこかに行ってくれ」
「オイオイ、もっと仲良くしてくれてもいいんじゃねーの?」
私は君と仲良くする気はない。ツバサから何か聞き出せそうだったのに、邪魔が入ってしまった。
「俺はこの船でお前と一番お近付きになりたいと思ってんだぜ?嬉しくねーの?」
「沙明、何度も言ったが、私は汎だ。そういう扱いはやめろと何度言ったらわかる」
「お前が率先して救助の誘導してくれたんだろ?恩人を慕わずにいるヤツがどこにいるっつーんだよ。贔屓目に見なくても、割とタイプの顔だしな」
沙明と恒例の言い合いをしていると、隣が立ち上がる気配を感じた。
しまった……沙明を追い払おうと夢中になってツバサのことを忘れてしまっていた。
「ごめん……私、今日はもう寝るね……」
そう言って去っていくツバサ。その瞳には、微かに涙が浮かんでいるような気がして。
「ツバサ……!」
追いかけなければ。そう思った時には、足がもう動いていた。
「なんだってんだよ……」
沙明がそうボヤいたことには、気づかなかった。