第3章 目は口ほどに物を言う【ラキオ】
「あれは、言い過ぎ、ですよね……」
「……私、嫌われたのかな」
悲しみと憤りが漂うロビーの空気。
それを切り裂いたのはオトメの一言だった。
「そんなこと、ないと思うのです」
「え……?」
「ラキオさん、あんなことは言っていましたけど、ずっとツバサさんを心配してる音が聞こえてたの。だから、ラキオさんがツバサさんを嫌ってるなんてこと、ないと思うのです」
「オトメ……」
オトメは、“音“によって人の感情を汲み取ることができる。
そのオトメが言うのだから、ラキオは本当にツバサを心配しているのだろう。
「汲み取り上手のオトメが言うんだから、信憑性はあるよ。だからツバサ、そんなに気を落とさないで」
「セツ……」
ツバサの気持ちが晴れて欲しいという一心で励ます。
ツバサ、鍵も言っていた。ラキオは、君に興味を持っているんだ。嫌いな人間に興味を持つなんてこと、普通はありえない。ましてやあのラキオだ。人間に興味を持って、しかも関わりが多いのは、むしろ好意を抱いているんじゃないか?
私の考えが伝わったのか、ツバサの顔がだんだん明るくなる。
「そうだね、落ち込むなんて私らしくない。オトメが言うんだもん、ラキオはきっと心配してくれてたんだ。ありがとう、皆。元気出た」
「いつもの、ツバサさんですね」
「キュキュ、元気になってよかったのです!」
「ああ。それじゃあ、私はちょっと行かなければならないところがあるから、失礼するよ」
「あれ、セツ行っちゃうの?」
「用事、ですか?」
「だったら仕方ないの。また明日なのです」
「ああ、また明日」
さてと、私はあの素直じゃない極彩色の学生を見つけ出して話をしなければ。