第49章 スビト・フォルテな衝撃【渋谷事変】
「これまでの話を総合すると、【帳】の基を破壊すれば呪詛師は後回しでもいいってことですよね?」
「あぁ」
呪詛師のレベルがどの程度か分からない。倒せるならそれに越したことはないが、もし実力が一級以上で、数でごり押しできなかったとしても、【帳】の基さえ破壊できればこちらの勝ちだ。
「でも、呪詛師があそこにいるなら、俺たちが来ることも警戒してるはずだ」
あのビルが正解なら、ヤツらがいるのはおそらく屋上。最悪 術師を辿り着かせないように、ビル内は改造人間か呪霊ががうじゃうじゃいる可能性もある。無策で向かっても消耗するだけだ。
「【鵺】ちゃんの力を借りれば、空から行けるんじゃない?」
「全員は無理……けど、二人ならいけます」
空からの奇襲――ありだな。ビルは四十一階建て。だが空から行けるなら、かなりショートカットできる。
「じゃあ、俺と……あと一人は……」
二人――自分が行くのは確定だ。戦闘になることは分かっている。この場を任された以上、自分が行かないのは格好がつかないしありえない。
式神使いは術師が狙われる。式神を使うなら、伏黒には階下で待機してもらった方がリスクも少ない。
残るは虎杖か詞織。
詞織は二級術師で実力も経験もあるだろうが、虎杖のあの拳の威力を見てしまったら そちらも惜しく感じる。
「俺が行く」
「ん、分かった。任せる」
どちらを選ぶか決めかね、二人を見比べていると虎杖が名乗り出た。すぐに詞織が了承し、作戦の方針が決まる。
「よーしっ! んじゃ、行くか‼」
渋谷Cタワーを見上げ、猪野は不敵に口角を上げた。
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