第49章 スビト・フォルテな衝撃【渋谷事変】
「猪野さん?」
「何やってるの、あれ?」
虎杖の呼びかけに反応しない猪野に詞織が首を傾げた。
「感動してんだろ。七海さんに頼られて」
伏黒の言葉に、なるほど と詞織は内心で納得する。
そんなやりとりをしていると、「オマエらぁ‼」と詞織たちに呼びかけ、猪野がピシッと指を立てる。
「任務の前に事の重大さを教えてやる。題して、五条サンがいなくなって困る二つのこと! 一つ、『五条家の失墜』‼」
五条家は五条 悟のワンマンチーム。
五条が利かせていた融通(ワガママ)で救われていた術師が数多くいる。虎杖や詞織もその一人だ。
そういった連中が後ろ盾を失い、最悪 消されることになってしまう。少なくとも、その筆頭は虎杖だろう。
「そして その二、『パワーバランスの崩壊』‼」
五条 悟がいるからという理由で大人しくしていた呪詛師や呪霊たちが一斉に動き出す。
五条 悟を失ったことで内輪がゴタついているときに 呪詛師や呪霊とプチ戦争が起こってしまったら、間違いなく負ける。
おそらく――それが夏油を乗っ取っている“何者か”の狙いだろう。
「負けたらどうなる?」
「国が崩壊する」
「人間の時代も終わるかもしれないですね」
詞織と伏黒の回答に、虎杖が「えっ⁉」と声が上がる。どうやら、事の重大さを猪野に語ってもらって正解だったらしい。
「分かってんじゃねぇか」
そう。それだけ、五条 悟という人間の影響力は強い。呪術界とっても、人間社会にとっても。
「行くぜ、後輩ちゃんズ! 七海サンが戻る前に【帳】をブッ壊す‼」
――五条 悟を助けるぞ‼
「応!」
「はい」
「もちろん」
虎杖、伏黒、詞織の真剣な表情に、猪野は満足げに「うんうん」と頷いていた。
* * *