第49章 スビト・フォルテな衝撃【渋谷事変】
――『お……が、い……ころし、て……』
里桜高校で「殺してくれ」と頼んできた震える声が、打ち据えた拳の感触が、命の重みが蘇る。
――「人を……殺したことある?」
順平にそう聞かれたときのことを思い出した。
――「わたしにできることは、被害が広がらないうちに殺すこと。これが受肉された人と、これから殺されるかもしれない人たちにできる、わたしの最善」
受肉された人間と同じ。星也ならば改造人間から元の人間に戻すことはできるが、それは遺体だけ。改造された人間自体を元に戻すことはできない。
――「術師やってりゃ、こういうこともあんでしょ」
これは呪術師である自分だからできること。
様々な感情を腹の奥底に沈め、虎杖はぐるりと遠回りをし、駆ける勢いのままに改造人間を蹴り上げ、殴りつけた。
『――よ、よ、よんだ?』
店のガラスを突き破り、新たな改造人間が現れる。
虎杖は無言で改造人間の顎を鋭く蹴り上げ、血を流して倒れるその頭を踏みつけた。
そのまま壁や看板を足場にビルを駆け上がる。屋上へ到達した虎杖は、そこにあった巨大な看板もよじ登って立った。
アイツらがいるのは渋谷駅十三番出口……あっちか。
虎杖は大きく深く息を吸い込んだ。
「ふっ、しっ、ぐっ、ろ――ッ! 詞織――ッ‼ 七海さ――んッ‼」
* * *