第47章 長き決戦のオーバーチュア【渋谷事変】
「……正直 驚いたよ」
きっと星也なら、目の前のこの地獄絵図のような状況に胸を引き裂かれそうになりながら、吐きそうな顔を無表情の仮面で隠して戦うのだろう。
けれど、五条の精神は揺らがなかった。
最初から全員を助け、守れるなんて思っていない。最小限の被害に収める――それが非術師たちのことでないということも理解している。
『なんだ? 言い訳か?』
「違ぇよ、ハゲ」
吐き捨てるように言って、五条はアイマスクを下ろした。
「この程度で僕に勝てると思ってる脳みそに『驚いた』って言ってんだよ」
火山頭を見下す【六眼】は、底冷えするほど冷めたさを孕んでいた。当然だ。精神は揺らがなくても、腹は立つ。
殺気を隠すことなく威圧し、五条は指をさした。
「そこの雑草。会うのは三度目だな」
交流会前に襲撃してきた火山頭を助けに来て一回、交流会の最中に一回、そして今回――舐めた真似しやがって。
「まずはオマエから殺す」
そう言って、五条はホーム扉の縁が飛び降りた。
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