第41章 青き春はドレンテにひび割れて【玉折】
「……星也。コイツが……?」
星也に連れられ、五条は閉ざされた結界の中へやって来た。
そこでは、幼い少女が腕や足を縛られ、椅子に固定されていた。そのうえ、目も塞がれ、口にも猿轡を噛まされている。
「ちょっとやり過ぎじゃね?」
「この結界に閉ざされた後も、様子を確認に結界内に入った見張りが三人 殺されているんですよ」
死刑待ちの特級被呪者――星也の妹。
夜蛾が上層部に掛け合ってどうにか先延ばしにするも、死者が出ていてはそれも難しい。時間がないとはこのことか。
星也が小さなテーブルに香炉を置き、火をつける。そして、少女の目と口の布を外した。ゆっくりと開かれた血のように紅い瞳とかち合う。
「――【斬刃(ざんば)】!」
「【防刃(ぼうじん)】」
真っ先に口を開いて放たれた言霊を、星也が同じく言霊で防ぐ。
なるほど。真言より短いから発動も早く、印を結ぶ必要もない。さらに呪力効率も良い。ただし、真言よりは強度が劣る。この分だと、攻撃も同じだろう。
五条の方にも放たれていたが、それはオートで発動している【無下限】が防いだ。
『……チッ。何しに来たの、神ノ原 星也。どうせ殺すでしょ、あたしたちを』
「殺しはしない。今日は君を……いや、違うな。詞織と詩音――君たち二人を助けにきた」
『助けに……?』
紅い瞳をすがめると、詩音は『あはっ』と声を上げる。
『あはっ! あはははっ! あはははははっ‼ バカみたい! バカみたい! バッカみたい‼ 殺そうとしたくせに! あたしたちのこと、見捨てたくせに‼ 何にもできない腰抜けが、偉そうなこと言わないで‼』
「ハッ。散々な言われようじゃねぇか」
鼻で嗤うと、星也はさして動じた様子もなく、静かに詩音の前に立った。