第5章 五夜目.雨
「そう言ってもらえて安心したよ。ありがとう」
『お礼なんて。壮五さんが決めたことだもの。私は無闇に反対したりしない』
「本当に?実は、まだエリさんに聞いて欲しい話があるんだ」
家を出て一人暮らしをするときの報告はケロっと言ってのけた壮五だったが、なんだか今回は歯切れが悪い。
「え、っとね…、大学、辞めちゃった」
『え゛』
カランと、グラスの中の氷が音を立てた。エリは気を落ち着ける為に、自分の烏龍茶を一気に煽る。
『ま、まぁ、大学中退の一回や二回、そんなに珍しくないわよね』
「二回は結構レアケースなんじゃないかな」
壮五は自分のグラスに新しくお茶を注いでから、追加の報告を持ちかける。
「もちろんだけど大学を辞めた理由があって、実はね…。今日、電車の中で芸能事務所の社長にスカウトされたんだ」
『スカウト?』
「うん。エリさん、僕は
アイドルになる」