第3章 三夜目.トライアングラー
—6小節目—
おアツいのをお届け
同日。大和が寮へ戻ると、未成年組がリビングに集まっていた。彼らの表情は、総じて暗い。
何があったのかと訊くと、環が返事をする。少し前に三月が帰って来たのだが、その顔は青く染まっていたらしい。どうしたのかと問い質してもはっきりとした返答はない。そして彼は無理に笑顔を作ってから、自室へとこもってしまったそうだ。
おそらくだが、あのおにぎり屋の看板娘と何かあったのだろう。その場にいた全員がそう思ったが、それを口に出す者はいなかった。
大和は大袈裟に笑い、努めて明るい声を響かせる。
「ほらほら、暗い顔しなさんなって。せっかく今日はクソ不味い握り飯から解放されたんだろ?なら特別に、今日は店屋物取っちゃいますか!しかも、お兄さんの奢りでーす」
「まじで?やりぃ。ヤマさん太っ腹ー」
「やったぁ!オレ、蕎麦がいい!」
「ナイスアイディア!私は天ぷら蕎麦にします」
「ありがとうございます、二階堂さん。部屋にいる兄さんの分も注文しても構いませんか?」
「おう。任せなさい」
かくして今日の夕食は、山村屋の蕎麦に相成ったわけである。