第33章 ハッピーイースター〜春待ちて
「母上!父上からの『一番手柄のご褒美』は何を貰われたのですか?」
「えっ…」
翌朝、朝餉の席で屈託のない笑顔の結華に聞かれた私は咄嗟に言葉に詰まった。
『ご褒美』という言葉に昨夜の甘くて濃密な夜の記憶が蘇り、朝だというのに身体の奥から熱いものが込み上げてしまう。
「あっ、ええっと…その…」
何と言って誤魔化そうかと必死に思案を巡らせても、頭に思い描くのは昨夜の信長様の艶めかしいお姿ばかりで……
(どうしよう…一番手柄だなんて大々的に盛り上げてしまったせいで皆の興味を集めちゃってる…)
結華の一言で、大広間に集まっていた武将達たちからも興味深そうな視線を向けられていた。
「そ、その…一番手柄って言っても私だけのものじゃなくて…見つけたのは家康も一緒だったしね。い、家康は?信長様から何を頂いたの??」
(昨夜、信長様は確か『家康にも褒美は用意してある』って言われてたはず…)
「……別に何も貰ってないけど。でも俺はいいよ。俺はただその場に居合わせただけだから。あれはあんたのお手柄でしょ」
「い、いやいや、そんなことないよ!」
「謙遜しなくていいんじゃない?で、何貰ったの?」
「昨夜の宴では披露されなかったからな。皆、口には出さなかったが気になってたんだぞ」
「御館様のご用意されたものだ。さぞかし素晴らしいものだろう」
「くくっ…お前は大層悔しがっていたな。敬愛する御館様から褒美を頂戴する栄誉を逃したことを」
「黙れ、光秀。勝負は時の運だ。武士たる者、正々堂々と勝負した上での結果は甘んじて受け入れるのが筋というものだ」
(お、大袈裟過ぎるっ…)
「ひ、秀吉さん、何か本当に…ごめんなさいっ!」
秀吉さんの熱い忠義心を無碍にしてしまったような気がして居た堪れなくなり、思わず頭を下げた。
「なっ…しゅ、朱里?何でお前が謝るんだ?お前が謝る必要なんてない…いや、寧ろ堂々と自慢したらいいぐらいだぞ?それぐらい一番手柄は名誉なことなんだからな」
「そうですよ、朱里様。女人でありながら一番手柄を上げられるとはご立派です」
「そ、そんな…なんか皆、大袈裟だよ…?」
(っ…話が大きくなり過ぎてる!皆の期待が高過ぎて、これじゃあ適当に誤魔化せそうにない。一体どうしたら…)
困り果てた私は助けを求めるように、隣に座る信長様へ視線を向けた。
