第15章 高嶺の藤に手を伸ばす$ 炭治郎裏夢
藤の花の屋敷。
負傷した鬼殺隊員を治療して休息させてくれる隊員の拠り所だ。
俺は最近、任務が終わると藤の花の屋敷に通っている。
目当ては勿論……
スッ。
いつものように客間の襖を開けると…
「那岐さん!」
会いたいと思っていた相手がいた。
「炭治郎君、任務お疲れ様でした。ご無事で何よりです」
「那岐さん…」
ギュッ。
愛しい人の温もりを感じられるだけで俺は幸せだ。
「もう、甘えん坊ですか?」
背中をポンと叩いてもらって、ホッとするなんて、家族以外では初めてだ。
「今日は何をお食べになりますか?」
「あ、えっと甘い玉子焼きを!」
「ふふっ、すぐにご用意しますね」
台所に下がる那岐を見送って、炭治郎は部屋の中を見回す。
特段変わりは無いのだが、彼女が活けてくれた花があったり、細やかに気遣いをしてくれるのだ。