第10章 裁判と約束
「任務の件はこれで終わり。次は杏寿郎の屋敷について。1月後に出来上がるから、先ほどの任務から帰ったら引っ越すといいよ。杏寿郎の生家とほぼ同じ作りにしているから、継子を新しく迎えるにしても不都合は生じないからね」
ほぼ同じという事はかなりの広さである。
2人で過ごすならば部屋は余るだろうが、今後、炭治郎兄妹を引き取る予定なのでちょうどいいのかもしれない。
「ご配慮ありがとうございます。きっと更紗も喜ぶかと」
穏やかに微笑む杏寿郎に、お館様も笑みを深めた。
自分の子供のように思っている剣士の笑顔を感じ取れることは、何よりも嬉しいのかもしれない。
「それなら建てた甲斐があるね。新しい屋敷で君たちが穏やかに過ごせる事と祈っているよ。では最後の1つ。更紗の力について」
笑顔から一変、杏寿郎の顔に緊張が走る。
「那田蜘蛛山での活躍、素晴らしいものだった。でも、力を溜めすぎるとあの子の体に支障をきたすようだね……可哀そうだけど、まだ判明したばかりだからこちらも具体的な解決策は掴んでいないんだ」
申し訳なさそうなお館様の声音に、杏寿郎は首を左右に振って憂う必要はないと示す。