第10章 裁判と約束
蜂の巣を叩いたかのような騒がしさに、お館様は人差し指を口元に当て静かにするようにと指示を出した。
その指示に全員が一斉に従い静けさが戻るが、聞きたくてうずうずしているのが見て取れる。
「鬼舞辻はね、更紗以外に炭治郎にも追っ手を放っているんだよ。その理由は更紗に関しては力の会得、炭治郎に関しては単なる口封じかもしれないけれど。私は更紗と炭治郎に対して見せた鬼舞辻の尻尾を掴んで離したくない」
更紗は炭治郎も鬼舞辻に追っ手を差し向けられていると知り隣りに顔を向けると、炭治郎も同じように更紗に驚いた顔を向け口をハクハクと動かしていた。
追われる理由は違えどまさか同じ鬼殺隊内に同じ境遇の存在がいた事実に、柱たちもだが本人たちが一番驚いている。
だがそんな稀有な存在が更に増える。
「そして恐らくは禰豆子にも鬼舞辻にとって、予想外の何かが起きていると思うんだ。2年以上も人を喰わずに理性を保ち続ける鬼なんて今まで存在していなかったからね」
つまりこの場に鬼舞辻の関心を引くものが3人も揃っているということになる。
「今日いきなり禰豆子の存在を快く受け入れることは難しいと思うけれど、鬼舞辻を倒すため、徐々にで構わないから受け入れてほしい」