第9章 風柱と那田蜘蛛山
「予想通りだな、どうやら当主は俺と更紗にいたくご執心の様子だ」
「杏寿郎君もですか?!」
杏寿郎は足を止め、攻撃が飛んで来た場所を中心に警戒しながら更紗を隣りに並ばせる。
「あぁ。大方、あの屋敷から君を連れ去った俺が気に食わんのだろうな……とは言っても更紗が1番狙われる。気を抜くな、迎え撃つぞ!」
当主が自分をまるで所有物のように扱うことに嫌気はさすが、倒しさえすればこのしがらみから開放されるのだと言い聞かせ刀を構え前を見据える。
「はい!でも攻撃が……?!」
キンッ
と金属が触れ合うような音が更紗の言葉を遮り、その足に見えない何かが巻き付いてくる感覚に襲われ、反射的にそこを薙ぎ払う。
すると巻き付いていたものは蛇が蠢くように地面を這いずりながら足から離れていった。
「更紗、大丈夫か?!……君は俺の背後に。警戒だけは怠るな」
「申し訳ございません……」
実質的な戦力外通告を受け、更紗は悔しそうに顔を歪めながら杏寿郎の背後へまわる。
「後輩の盾になる事は柱として当たり前のことだ、気にする必要はない」