第9章 風柱と那田蜘蛛山
その頃、更紗はしのぶの適切な処置により急激に意識を取り戻し、勢いよく布団から起き上がり頭を垂れていた。
「しのぶさん!!千寿郎君!!すみません!私……」
「更紗ちゃん、気にすることはないですよ。ほら、頭を上げてください。千寿郎君も驚いていますし」
そう言われて千寿郎をチラリと見ると、驚き目を見開きながら両膝を立て涙目で更紗に向かって腕を伸ばしていた。
それに応えるように更紗は笑顔で両腕を伸ばすと、そっと体を労りながらも胸の中に入り涙を流した。
「更紗さん、よかったです。僕……いなくなってしまうんじゃないかと思うと怖くて……もう苦しくないですか?痛むところとか……」
こんなにも自分を心配し涙を流してくれる千寿郎に更紗は申し訳なさを感じるが、ここまで大切に思ってくれていることに愛しさが増し抱きしめる力を強めた。
「しのぶさんのお陰様ですっかり元気になりました。もう苦しくも痛くもないですよ、ずっとそばに居てくれたのですね……ありがとうございます」
「兄上に更紗さんのことは任せていただきましたし、何より僕がそうしたいと望んだことですので」