第9章 風柱と那田蜘蛛山
いつまで睨んだところで、舌を噛まぬように布を入れられ口を塞がれた男たちからは情報は聞き出せない。
また布をとっぱらったとしてもすぐに舌を噛むことを厭わないので、どちらにしても情報としてこの場では役に立たない。
そんな男たちから視線を外し、実弥は1度深呼吸して気持ちを落ち着かせ杏寿郎へ向き直る。
「俺達が鴉から聞いたのは更紗がいきなり攻撃を受け重傷を負ったこと、逃げた人間の数は5人……これに関しては悲鳴嶼さんらも残り2人を見つけて全て捕縛済みだ。後は鬼の出現、てめぇは見たのかァ?鬼の姿をよォ」
柱の力は凄まじいと感じると共に、逃げた人間を全て捕縛してくれていた事に心の中で安堵しながら、杏寿郎は首を左右に振った。
「俺から死角だったので出現したところは見ていない。消えゆく瞬間も黒い影としか……1番詳細を知るのは更紗だ。あの子は鬼の正体はあの屋敷の当主だと言ったからな」
柱であれば全員が知っている更紗にとっても鬼殺隊にとっても、危険で厄介な鬼となった当主。
その当主は人間だった頃の記憶を持ち合わせ、鬼になったことにより更紗への執着を強め、また鬼舞辻無惨による命に依り再び近付いてきたのだ。
「鬼になってまで姫さんの事覚えてるって、とんでもない執念だな……こりゃあ、姫さんに隙が出来るまで姿現さねぇかもな。とりあえず、コイツらの事話すからしっかり聞いとけよ」
すでに知っている実弥と義勇も、杏寿郎と共に天元の言葉に耳を傾けた。