第23章 上弦と力
ここに師範である杏寿郎や同じ師範を持つ継子がいるからか……伊之助たちが聞いた情報と同じものが伝えられた。
(善逸さんの兄弟子が鬼になんて……それじゃあ善逸さんの育手は……)
近頃善逸の様子がおかしかったので理由を聞いてみたのだが、自分や杏寿郎、同じ離れで生活を共にしている炭治郎や伊之助にも理由を話さなかったので、無理に聞くのも憚られ見守っていた。
まさかこんな形でこんな情報を聞かされるとは、全員が思ってもみなかったが……
同じ育手の立場であった杏寿郎に視線を遣ると、杏寿郎も更紗を伺っていたようで目が合う。
しかしその表情は険しいような悲しいような複雑なものだ。
「自分の弟子が鬼になった場合……育手や師範は掟にのっとって切腹だ。前例はあまりないので詳しく分からんが、確か介錯なしだと聞いたことがある」
「そんな……それでは善逸さんの育手は……」
亡くなっただけでなく、それに至るまで酷い苦痛を伴ったはず……
それ以上は炭治郎や杏寿郎がいるので言葉にしなかった。
介錯なしの切腹がどのようなものか、わざわざ口に出して再確認させるような真似はどうしても出来なかったし、したくなかったからだ。