第21章 秘密と葛藤
どうやら更紗の就職先が無事に決まったようである。
引き取り先は変わらず杏寿郎だが。
「お、姫さんが照れなくなった。人って慣れるもんなのねぇ……なんかちょっと寂しいが」
「え?照れるって……何を」
無事に就職先が決まった喜びから今の自分の状況など気にもとめていなかったようだが、両肩にある心地よい温かさや手の感触、そして先ほどまでより明らかに近く見える杏寿郎の胸元。
それらの情報が一気に更紗の脳内を駆け巡り、現状を把握した途端、体がピキリと固まり顔がみるみる熱くなり赤く染まっていった。
「杏寿郎君……少し恥ずかしいです」
「ふむ、それは困った!今隠してやるからな!」
いつも通りの光景が天元と実弥の瞳に映し出された。
それを見られている間も、更紗は杏寿郎の腕の中からどうにか脱出を試みたものの2人に見せまいとする杏寿郎の力は強く途中で諦めてしまった。
「結局照れんのかよ!はぁ……ま、その方がお前ららしくて安心するわ……姫さんの照れた顔は死ぬまで見れそうにねぇな」
「普段自由にさせてんじゃねぇかァ……よく分かんねぇところで独占欲だすなよなァ」
本日の臨時柱合会議、杏寿郎のよく分からない独占欲にて終わりを迎えた。