第20章 柱稽古とお館様
芳しくない杏寿郎の返答に、更紗は自身の手に視線を落とす。
(なんて中途半端な力なのでしょう……命を繋ぐものを糧とするならば、何でも治せたらいいのに。そうすれば皆さんが笑顔でいられたのに……もっと頑張っていれば治せたのかな)
タラレバをいくら心の中で叫ぼうと力が変異するわけでもない。
それでも願わずにはいられなかった、皆の表情が酷く沈んでいるから。
「もっと頑張っていれば……などと考えていないか?」
いつの間にか心の中で考えていたことが漏れ出ていたのかと更紗はビクつきながら柱たちを見るが、言葉を発した杏寿郎以外首を傾げていたので、そうではなかったらしい。
つまり杏寿郎が更紗の表情から、心の中を読み取ったということだ。
人の感情の機微に敏感な杏寿郎に苦笑を漏らし、更紗は小さく頷いた。
「……考えていました。考えても仕方がないですし、頑張ったところで恐らく望む力は手に出来なかったはずです。それでも、こんな力を持っているからこそ願ってしまいます。お館様を救える力が欲しい……と」
笑顔のはずなのに、今にも涙が零れそうなほど瞳が揺れ、顔は悲しみで満ちてしまっている。