第20章 柱稽古とお館様
3人の周りにお花が飛び散る微笑ましい光景が広がる部屋に、凛と響く2人の女子の声が響き渡った。
例の幼子たちがいつも通り柱たちを呼びに来たのだ。
しかし案内されたのは大きな部屋が見える庭ではなかった。
屋敷の中の一室。そこに柱全員が腰を下ろし、落ち着かない様子でここへ来るであろうお館様を待っている。
今までもこういった事があったのかと更紗は気になったが、杏寿郎を含めた全員が神妙な面持ちをしているので、声を出すことさえ憚られた。
(先ほどまでの皆さんと雰囲気が全く違います。杏寿郎君も……沈んでいるように見えますし。お館様の体調が優れないのかな)
心の声は誰にも届くことはないので、疑問が晴れることはない。
そんな状況は柱たちと同様、更紗の気持ちも深く沈みこませていった。
(私の力でお館様のお体を治して差し上げられたらいいのに……どうすればお館様のお体はよくなるのでしょうか?血を使って治癒しても意味ないの?)
「更紗」
1人どうにかお館様の体に関して打開策はないかと考えていると、頭に心地よい刺激と自分を呼ぶ声が聞こえてきた。
「はい、どうされましたか?杏寿郎君」