第20章 柱稽古とお館様
あれから一刻半ほど経った現在、更紗は煉獄家へ続く道を義勇と肩を並べて進んでいる。
つまり合格を義勇から貰えたのだが、脚捌きを1つでも失敗しようものなら同行を許してもらえない事態まで追い詰められたところまできて、ギリギリ時間内滑り込みでもらえた合格だった。
「あ!冨岡様、お家が見えてきましたよ!中に入ったらお茶をお出ししますね」
子供が探していた親を見つけた時のような満面の笑顔を浮かべる更紗の様子は、自宅に帰れたことが本当に嬉しいのだと義勇でも分かるほどのものだった。
「ありがたくいただく。その前に煉獄に挨拶だけでも……」
「はい!きっと笑顔でお迎えしてくださると思いますよ!私も昼間に1人でお買い物に行って帰ってきた時は、いつも笑顔で迎えてくれますので」
話だけでも2人の普段の在り方が浮かび義勇の表情が綻んだところで、目的地である煉獄家の門の前に到着した。
流石と言うほどのことでもないが、更紗はやはり慣れた手つきで門を開き義勇を庭へと招き入れる。
「フフッ、あちらから杏寿郎君の声が聞こえてきます。冨岡様、こちらへどうぞ」
案内する場所は道場である。