第20章 柱稽古とお館様
ふわりと微笑む更紗に無一郎も同じく柔らかい笑みを返した。
「もっと自信持っていいよ!その方が俺もだけど柱全員喜ぶと思う。特に煉獄さんにとっては更紗ちゃんが初めて育てきった継子だから嬉しさもひとしおじゃないかな?」
今まで嫌な顔一つせず鍛錬をつけてくれ、不自由な身の上になってからはほぼ毎日共に任務に赴いてくれた杏寿郎の姿が更紗の頭に浮かび、その人が笑顔になることを想像すると胸の中がポカポカと暖かくなる感覚に包まれる。
「はい!杏寿郎君から何を聞かされるのか怖いですが、最後まで皆さんの期待に応えられるよう頑張ります!では昼餉だけお作りして冨岡様の所へ向かわせていただきます!昨日今日とお世話になりました」
「昼餉は2週間もここで立ち往生してる人たちに作らせるから更紗ちゃんは早く先に進んで。いつまでも君に甘えさせてたら締まり無くなっちゃうからさ」
更紗たちの稽古を見守っていた剣士たちを鋭い視線で一瞥すると、睨まれた者たちは更紗に悲しげな視線を送りつつ手を振りながら道場を後にしていった。
それを苦笑いで見送り手を振り返すと、無一郎へと感謝の念を込めてもう一度頭を下げる。
「近々会えると思う……と言うか会えることを楽しみにしてる。行ってらっしゃい、更紗ちゃん」
なんの事やら分からなかったが、きっとこれは聞いても教えて貰えない案件だと確信した更紗は頷きを返して時透邸を後にした。