第20章 柱稽古とお館様
合格を貰えればあと一歩だ。
稽古での合格を手に出来れば次は治癒を行った状態でもきちんと動きを保てているかを判断してもらうことになる。
「はい!頑張ります!」
どれだけ体に木刀を入れようと立ち上がり、時間が経つごとに無一郎が入れることすら難しくなってきている。
決して同意するわけではないが、剣士たちがたてている噂の意味が分かるような気がした。
(柱から見ると素直な吸収の早い子って映るけど一般剣士なら……なるほどね、阿修羅って映ってしまうのかな。表情とか普段のふにゃふにゃとは全く違うし)
正直なところ更紗は稽古中とてつもなく必死なだけだ。
本番までとはもちろんいかないが、課せられる合格基準がどの柱も高く……思っていても言わなかったが他の剣士よりも更紗に対する合格基準がめっぽう高いのだ。
治癒を行いながらの稽古を敢行しているにも関わらず、まるで力を試されているように高く厳しい。
(私だけ厳しくする理由……期待してくださってるからと思えば嬉しいだけですが……仮にそうであってもしても何か理由がある気がします)
「気になります!」
「何が?!」
つい心の声が出てしまったので無一郎を驚かせてしまったが、それには答えず笑顔で誤魔化すだけにしておいた。