第6章 成功の影には必ず何者かの失敗がある
トリガーの皆さんの事は、私は事務所で調べた。
三人共に華やかな雰囲気を纏った、スーパースターって感じの人達。
センターは九条天さん。
中性的なルックスから天使と謳われる彼は、並外れたサービス精神と歌声が魅力的。
その笑顔はファンを温かく包み込むような柔らかさがあり、なるほど確かに天使かもしれない、と思った。
グループリーダーは八乙女楽さん。
俺に着いてこい系の人で、言動は何もかも男らしい。
自信に満ち溢れたトップスターという雰囲気でファンを魅了する。
目力が強く、彼が見つめれば相手の女性はコロッと恋に落ちるのだろうな、という感じ。
最後の一人は十龍之介さん。
沖縄生まれのやや濃い肌と、がっしりとした体つきが特徴的。
かき上げられた前髪がワイルドで、女性をその気にさせるのが上手そうなイメージ。
大きな体から表現されるダンスも一流。
と、どの人も個性光る正真正銘のアイドルだった。
顔を合わせた時に、思わず萎縮してしまう自分の姿が、容易に想像できる。
本音を言うと、こういう派手な人達とは、できればお知り合いになりたくない。
基本的にトラブルが付き纏うし、目をかけられれば他者から嫉妬されてしまう。
当人達は悪くなくても、善良な人間であっても、取り巻きまで善人とは限らないのだ。
こんな世界に来る前の自分なら、遠目に眺めて、挨拶程度の関わりを保ち、トラブルが起きても傍観主義を決め込んでいただろう。
今の自分は、そういう訳にはいかないけれど。
今日の私は、アイドリッシュセブンの現場マネージャーだ。
トラブルは事前に回避しなければならないし、関係性はマネージャーとしてそこそこ築かなければならない。
正直、苦手分野だと思う。
今まで私が誰かと関わる時は、それなりの距離間を保ってきた。
親しくなりすぎず、穏便に、ドライに。
それが私の人付き合いだった。
今の私の立場で、そんな中途半端は許されない。
難しいと思う。
色々大変だと思う、けれど。
演じてみせましょう、完璧な社会人として。
役割に沿った役目を全うして、役になりきる。
そうすれば、私は物事に多少動じなくなる。
きっと上手くいく、と自分を信じてやりきるしかない。
指先がぷるぷる震えて内心ビクビクだけど、それでも。