第8章 夏祭り
「この浴衣ねえ、雨さんに着て欲しかったんだけど着る機会なくて…」
「代わりに着てしまっていいんですか?」
「その代わり2人が並んでるところ写真撮っていい?」
『まだ撮るんですか』
「はい赤司君。客間使って着ていらっしゃい」
「ありがとうございます」
その後リビングで待っていると黒い浴衣を着た征十郎が現れる
雰囲気の違う彼に息を呑んだが隣にいる雪さんはまたも目を輝かせていた
「おまたせしました」
「征十郎君似合う!サイズもバッチリ!着付けもバッチリ!」
「ええ、ありがとうございます」
「ああ着てた服置いてっても平気よ。家まで送りましょうか?」
「どうせ名前ここまで送るので、置いといてください」
「いつもありがとうね」
まあそれは想定の範囲内だ。どうせ送り届けてくれるんだろうともう分かっている自分がいる
浴衣姿の彼を見て、征十郎が紫原みたくデカくなくて良かったと笑っていると雪さんに和室に通され写真撮影会が始まった
「わー写真!入学式以来の征十郎君との写真!」
『…そんな撮らなくても』
「もっと近寄って!」
「だそうだ」
『…はい』
雪さんは2人一緒に写真を撮り、その後征十郎のソロショットも撮影する
彼のソロショットは一部に高く売れそうだなんてブロマイド販売を企画しながらの光景を眺め、撮影が終わった彼女は満足そうに笑った
そのまま玄関に連れて行かれ、モデル代とか言って臨時のおこづかいをもらってしまう
着付けしてもらったのにと考えていると征十郎ももらっていた。最初は断っていたが押しの強い雪さんには勝てず結局受け取らざるを得ないようだった
「それじゃあいってらっしゃい!気をつけてね」
『はい。行ってきます』
「征十郎君も、行ってらっしゃい」
「…はい。行ってきます」
ドアが閉まるギリギリまで手を振る雪さんに手を振り返し、彼と歩き始めた