第22章 黄色の入部
「…苗字、怖」
『あは、やっちゃったぜ』
「苗字、黄瀬と付き合ってたのかー?」
『今の涼太に彼女なんて居ないよ。ね、涼太』
モデルの仕事もなんだかんだ真剣にやっていた彼だ
彼にそんな暇はないだろうしそれに、と考え彼の目線に合わせしゃがみ込む
『涼太』
「…なんスか?」
『足痛いから、保健室で手当してもらっていい?』
彼を立ち上がらせ体育館から退出させる。この後は多分征十郎か虹村先輩が対処してくれるだろう
いつもなら騒がしい涼太も今は大人しい。男女2人で保健室に入るのは問題があるだろうかと考えていると、普段と比べ小さい声で涼太が話しかけてくる
「…何で保健室なんスか?」
『さっき壁蹴ったら足痛くなっちゃった』
「名前っち1人でも大丈夫でしょ」
『えーじゃあ涼太が、泣きそうな顔してたから?』
「…肩、借りても良いっスか?」
『どーぞ』
あたしより大きな身体を折り曲げて包み込まれる
いつもなら突き飛ばすところだがこういう空気くらいは読めると彼の背中を撫でる
「…名前っち、オレ、」
『勝ちたかったんでしょ?
大丈夫だよ、始めて2週間で1軍まで来れる方が変だわ』
「名前っぢ…」
『…ただ、問題があるんだよなぁ』
「問題?」
『灰崎が、部活をやめるかもしれない…』
それまでに勝てれば良いけど。と呟くと、涼太は鼻をすすりながら肯定を示して頷く
彼が泣き止むまでその場であやし、涼太は先に帰らせその日の対決は終わった