第16章 チョコばらまく日
『ふう』
出来上がった大量のマドレーヌを見て溜め息を吐いた
粗熱が取れたらラッピングしようと長らく放置していた携帯を開くと、和成から「オレの可愛い妹ちゃんが名前ちゃんにチョコ渡したいつってんだけど明日部活何時に終わる?」とメールが届いていた
『…小学生が出歩いていい時間じゃないよなぁ?』
気持ちは嬉しい。なんて可愛い小学生なんだろうと考えるが、部活終了時間に合わせて出掛けるのは危険に違いない
だからといって昼間は学校があるしどうしようと思いつつ返事を送ると、持っている携帯が震え始めた
「夜遅くにワリ!もう電話のほうが早いと思ってさ」
『うん、まあそうだよね』
「オレ明日部活ねえから、名前ちゃんの家まで行くわ」
『え?いいよ中間地点で』
「そういうわけにもいかねーだろ、なんかあったら困るのオレだって」
『いやこっちだって同じだけど』
彼が家まで来る気なのかと悩むが、征十郎ならともかく和成が来てその様子を雪さんに見られたくないと考える
別に見られたから何かあるのかとも一瞬悩んだが、思春期の親にバレたくない気持ちなんだろう。折衷案を出すことにした
『せめてストバスコートかコンビニとかにしてくれない?』
「ん?家だとなんかだめなことでもあんの?」
『…家族に、見られたくないので』
「そんな理由かよ!?」
電話越しでゲラゲラ笑う彼の様子は目に浮かぶ
ここまで笑いの沸点が低いと毎日楽しいだろうなと、思わず笑みがこぼれた
「じゃあストバスコートいるわ、どこのストバスコートがいい?」
『そこはやっぱりストバスコートなのね…』
和成にどこのストバスコートがいいかを説明すると「了解!また明日な!」と言って電話を切られてしまう
もう少し話をしても良かったんだがと通話時間が表示されている携帯をテーブルの上に置き、手を洗い直してからラッピングの作業に取り掛かった