第14章 昇格試験
お開きの指示を受け未だ落ち着かないが、いつも通り征十郎と帰っていると冷たい風が吹く
『うー、今度手袋買おっかなー、でも携帯いじりづらいし…ポッケに突っ込んで冬越そうかな~』
「それは転んだときに危ないからやめた方がいいと思うが」
『うーん…そうだよね…』
両手を口元に持ってきてと息を吐くと、一瞬指先が温かくなる。征十郎の指先を見ると彼も手袋をつけていない
『征十郎は?手、冷たくないの?』
「確認してみるかい?」
差し出してきた征十郎右手に触れるとひんやりとした冷たさが伝わってくる
『冷たいね』
「名前の手も十分冷えているが、オレの手の方が冷たいみたいだね」
『そういえば、手が冷たいと心が暖かいと言うよね?』
「それはその人の体温によるんじゃないかい?」
『まあそうだよねー』
相手の体温が高いか低いかで結果が変わってしまう
どこかの誰かが作った迷信だろうと征十郎と話しながら足を進めているとあっという間に家の前まで着いた
いつも通り彼にお礼を別れの挨拶をする
『じゃ征十郎ありがと。また明日ね』
「名前」
『え、どうした征十郎』
「すまないね」
それが何に対しての謝罪か分からず瞬きをすると、次に目を開くときには唇に柔らかいものが当たっていた
彼の唇だった。冬で冷え切っていたのか冷たいことは分かる
どのくらい時間が経ったのか分からないが、すぐに唇は離れたが、もう1度重なった
「じゃあ、また」
そういった彼はいつもと表情1つ変えず去っていく
『最近の中学生怖いわぁ…』
気温に対して段々と火照り、赤く染まっているであろう両頬を隠すように触れる
ていうか征十郎、サラッと2回キスしたなあ恐ろしい人だななんて考えながら視線を征十郎の方に向けて、後ろ姿を見た
相も変わらずあの赤髪は夜には目立っていて、どこにいるか一目瞭然だが、いつまでも外で変な動きをするわけにいかないので家へと足を動かす
その日の夜は、当たり前のようになかなか寝ることができなかった