第6章 藤に詩へば$(無惨裏)
人を食えば飢えを凌げる。
その事に気付いた時に、もうここには居られないと思った。
このままここに居れば、いつか白藤を食らってしまう。
それが怖かった。
化け物となってしまった舞山が、それでも一番気にかけるのは、愛しい女性、ただ一人。
数日後、人を食った事が露見し、産屋敷から除名処分となった舞山は、名を鬼舞辻無惨と変え、姿を消した。
「化け物」
「鬼女」
「狐憑き」
白藤の白くなった髪を見て、人々が口々に罵詈雑言を浴びせてくる。
私を置いて、一体、お兄様は何処へ行かれたのか。
「お兄様……」
彼女の声に応えは無い。
それがとても悲しくて、涙が止まらなかった。
その後、鬼舞辻の記憶を封じられ、現在の白藤となったのは今や昔のことである。
-了-