第45章 里帰り$
「あの、すみません。冨岡さん、お風呂と片付けありがとうございました。あと、その…今日は何故、私と目を合わせてくれないんですか?」
「………俺も分からない」
冨岡の思いもよらない返事に驚いてしまう。
「え?」
「お前の顔をしっかりと見られない」
表情が乏しいと言われる彼だが、こうして見るとやはり年相応に悩める青年なのだと自覚する。
「冨岡さん、あの…何か、私に言いたいことや、聞きたいことがあるんですか?」
「………ある」
「はい。ちゃんと聞きますから、教えて下さい」
お互いの鼓動が聞こえる。
冨岡さんの心音が早鐘を打っているようだ。
「何故。師範だけ、名前で呼ぶんだ?」
「へ?」
もしかして、それはもしかするのですか?