第75章 祝福の白は青と交わる$(冨岡裏)
「アオイ、大丈夫?」
「カナヲ……」
「あのね、炭治郎たちがね……後でここに来て、皆で祝勝会をしたいって言ってて……」
祝勝会。
戦いに行ってた皆からすれば、お祝いなんだろう。
でも、私みたいな半端者からしたら……
「祝勝会、おめでたいけど、ここは蝶屋敷だから。治療中の人も沢山いるし……だから、会場は藤の屋敷にしたらどうかしら?」
押し黙ったカナヲを後目に私は調理を始める。
本当は判断するのは私じゃなくて、胡蝶様なんだろうけど。
炭治郎さんは多分、全員を巻き込んでお祝いしようとするだろうから……
その時きっと、私はみんなの輪の中には入れない。
同じ隊服を着ていても、私は鬼と戦う恐怖から逃げた人間だから。
生き残りたくて必死で走って、最終選別は山を逃げ回って生き延びただけの腰抜けだ。
この気持ちは、きっと善逸君くらいにしか分からないだろう。
彼は凄く大きな声で喚きながら、逃げ回っていたっけ……
それでも、あの決戦で彼は生き延びた。
立派な隊士だ。
「アオイちゃん、カナヲちゃん、久しぶり!!」
「善逸さん……」
善逸が伊之助を連れて、蝶屋敷へやって来たのである。