第72章 乞い願う、光を求めて
「冨岡……」
煉獄すらも目を丸くする程である。
誰も彼の感情を吐露するような絶叫を聞いたことが無かったのだから。
「竈門炭治郎!!今この場で、お前の頸を落とす!同じ師を持つからこそ……今のお前を、俺は許すことが出来ない!!」
抜き身の刀を炭治郎へ向けて冨岡は宣言した。
「冨岡!!」
確かに同門で鬼が出たとなれば、責任を追求されるかもしれないが……
煉獄は飛び出そうとした冨岡の羽織を掴もうと手を伸ばすが、それより早く踏み込んだ冨岡の動きの方が勝った。
「水の呼吸 拾ノ型 ……」
「止めてぇーっ!!」
駆けてきたのは……
「禰豆子ちゃん……」
「お兄ちゃんを……殺さないで、お願い……」
お前達、兄妹はつくづく……
「あの時とは違う……俺は、二度もお前達を見過ごす訳には行かない!!」
「どうして!?私だって……戻れたのに!!それなのに、お兄ちゃんは殺すの!?」
「鬼殺隊から鬼を出す訳にはいかない。いかなる理由であろうと例外はない……」
「……嫌。駄目!!殺さないで!!」
「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」
鬼気迫る迫力の冨岡に誰も動けずにいた。