第72章 乞い願う、光を求めて
藤の花を見ると、昔の幻影を見るのだ。
まるで白昼夢のような、それでいて胸の奥を掴まれるような、そんな何かを藤の花に感じていた。
記憶を手繰ろうにも、いつも霞んでしまう光景に現実味が湧くこともなく、いつしか忘れてしまっていた。
猗窩座が藤の花の匂いを付けたまま、無限城に着いた時は激昂しかけた。
藤の花を私から奪う者は……誰であろうと許さない!そう思った。
だが、違う。
奪われたのではない、私は自ら手放した。
「舞山様!!」
「……」
この手を伸ばすことで、彼女がより闇に染まるのではないかと、不安になったのだ。
「かしこみかしこみ、もう申す。この者を浄化し、あるべき姿へ戻し給え」