第72章 乞い願う、光を求めて
「産屋敷殿。居られますか?」
ちっ、忌々しい。
「今日は調子が良い。薬は不要だ」
「そうでしたか、それは喜ばしいですね」
何が喜ばしいのだ。
確かに活動できる時間が増えることは嬉しい事だが、彼女に負担はかけたくない。
「そういえば、白藤殿は?」
「体調を崩してしまったようでな。今は伏せっている」
「そうでしたか。であれば、回復薬を置いて行きますので」
貴様の薬など、宛になるものか。
舞山は内心で毒付きながら、薬師が置いて行った薬方を睨めつけた。
薬師が屋敷を出てから、舞山は眠る白藤の額に手を当てた。
どうやら熱は引いたようで、ほっと息をつく。
舞山はこの時、まだ気付いて居なかった。
陰陽師との会話には気をつけなければならないということに。