第70章 咲くは朱なれど散るは白
なのに、この胸に空いた穴は一向に埋まらなかった。
天命が尽きるその前に他者の体を渡り歩く術を完成させた私は、それからずっと、今まで生きてきた。
今思えばそれも、晴明が生まれ変わるのを待っていたからなのかもしれない。
だが、あの男は俺の前に現れはしなかった。
信仰の薄らいだ世界で、いつしか十二神将さえ見えなくなった。
ああ、そうか。
あの男がいなくなった時点で、俺はもう全て諦めていたのだ。
無いものばかりを望み、見たい景色だけを追い求めて、そうしていつしか一人になった。
「おーい」
その声は……
「まったく、いつまで待たせるんだ?」
あの男に違いない、最後の最後で、こうして……
いや、さいごたからこそ、来てくれたのか。
無惨の放った黒龍の炎が蘆屋道満の胸を貫き、そのまま、彼は事切れた。
眠るようなその横顔はどこか幸福そうにさえ見えた。
「さて……どうする、鬼殺隊。私も殺すか?」