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鬼滅の刃R18 藤の花嫁(冨岡夢)

第70章 咲くは朱なれど散るは白


なのに、この胸に空いた穴は一向に埋まらなかった。


天命が尽きるその前に他者の体を渡り歩く術を完成させた私は、それからずっと、今まで生きてきた。


今思えばそれも、晴明が生まれ変わるのを待っていたからなのかもしれない。


だが、あの男は俺の前に現れはしなかった。


信仰の薄らいだ世界で、いつしか十二神将さえ見えなくなった。


ああ、そうか。


あの男がいなくなった時点で、俺はもう全て諦めていたのだ。

無いものばかりを望み、見たい景色だけを追い求めて、そうしていつしか一人になった。


「おーい」


その声は……


「まったく、いつまで待たせるんだ?」


あの男に違いない、最後の最後で、こうして……


いや、さいごたからこそ、来てくれたのか。




無惨の放った黒龍の炎が蘆屋道満の胸を貫き、そのまま、彼は事切れた。


眠るようなその横顔はどこか幸福そうにさえ見えた。



「さて……どうする、鬼殺隊。私も殺すか?」


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