第70章 咲くは朱なれど散るは白
「白藤!!炭治郎!!戻って来い!!皆お前達のことを待ってる!!」
冨岡が力の限り叫ぶが、二人は反応しない。
その影で、蘆屋道満が刀印を結び、呪を唱えようとした。
「戯言を……オン、キリキリ……」
「させるか!降伏!!」
無惨の背後に居る龍神から雷(いかずち)が放たれる。
黒龍は金晴眼で蘆屋道満を睨め付け、雷を次々と繰り出していく。
無惨もまた憎き蘆屋道満を屠(ほふ)るが如く、追撃の手を緩めない。
「鬼舞辻、貴様ぁ!!」
苛立った蘆屋道満から怒号が飛ぶ。
禍々しい眼光をこちらに向け、蘆屋道満は再び懐から何かを取り出した。
「貴様など恐るるに足らん。天津神、国津神……」
「貴様に詠唱はさせない!!」
無惨が再び蘆屋道満に向き直り、黒龍を差し向けるが、先程の様に雷を出さなくなってしまった。
「どうした!」
「黒龍一匹に何が出来る……」
さも愉快といった風情で高笑いをしながら、蘆屋道満は手にした掌大(てのひらだい)の小さな髑髏(しゃれこうべ)を用いて再び呪を唱える。
「禍物(まがもの)よ、禍者(まがもの)よ、我が声の元へ集え!!」