第6章 帰り道を探して
「何ですか?」
「いや、本当においしそうに食べるなぁと思ってね。」
「本当においしいですから。」
そう言うと、また黙々と食べ始める。
「そういえば、今日は何か見つかったかい?」
燭台切りが問うと、レンの箸が止まった。
「いえ、何も見つかりませんでした。これほど手がかりが何も無いとは思ってもみませんでした。」
もしかしたら、落ち込んでいるのか?
相変わらず表情は変わらない。
「普通はあるものなのかい?」
「時空間忍術の類なので解明されている事は少ないですが、あくまで術なので普通はあるものだと思います。」
「時空間忍術って?」
「ある地点から違う地点へ瞬間的に移動する術です。尤も、短い距離を移動する術が多いですが。」
「君が使ったっていう方陣は長距離だったの?」
「おそらくは。着地点がどうしても読み解けなかったのですが、複雑さから言って長距離なのだろうとは思っていました。」
「なら、飛んだ地点に目印になる術式があるってこと?」
「その筈です。」
「へぇ。」
そういうものなのか、と燭台切は思う。
「道を作る時に、始点と終点を決めてから取りかかるでしょう?術を組むのはそれと一緒だと私は思うんです。」
レンは少しだけ俯くと、ぽつりと呟いた。
「なのに、何も見つかりませんでした。」
それきり黙って、また箸を動かした。