第6章 帰り道を探して
燭台切が料理を作り終えた頃、厨の戸口に息を切らしたレンが帰って来た。
戸に手をつき、肩で息をしている様子から、余程焦って帰って来たらしい。
「た、ただいま、もどり、ました…!」
息が中々整わない様だ。
どれだけ全力で走ったんだ。
「そんなに急がなくても大丈夫だよ。ちゃんと作ったから。」
と言って苦笑する。
レンはほっとした様子を見せ、食卓に座った。
「それより傷はどう?そんなに全速力で走って来たなら傷口が開かないかい?」
「大丈夫です。だいたいは塞がってるんで問題ありません。」
ーってことはまだ治りきってないんじゃないか。
燭台切は、やれやれ、と思いながなら作った物を食卓に並べていく。
ー魚の煮付け、朧豆腐、味噌汁、茄子の煮浸し。
うん、我ながら上出来だ。
レンの様子を伺うと少し目を丸くして驚いている。
「これ、全部作ったんですか?」
「そうだよ。何か嫌いなものでもあった?」
聞くと、黙って首を横に振った。
「そう、よかった。なら召し上がれ。」
「いただきます。」
レンはそう言うと、黙々と食べ始める。
燭台切はレンの向かいに座る。
よく見るとキレイな子だと思う。
目は前髪で隠れがちだが、大きめで形よく、肌は陶器のように白い。鼻筋はすっと通っていて、唇はふっくらと紅をさしたようなキレイな色合いだ。
普段は硬い無表情で冷たい印象を受けるそれが、ご飯を食べている時は僅かに緩み、ほんわかと微笑む。
本当に美味しいんだと、よく伝わる。
作った甲斐があるというものだ。
ふとレンと目が合った。
残念、無表情に戻ってしまった。