第1章 俺が彼女を好きになる迄の話。
「(絶対っ!!たまたまじゃねぇだろ!!
何あれ!?滅茶苦茶初心だな、おいっ!!)」
毎回の好物の水まんじゅうを同じ店で買ってくる兄ちゃんの言うたまたまは絶対に嘘だ。
が喜ぶからわざわざ買ってきて居るのだろう。
「不死川は……青いな…。知っているか?あいつは今回わざわざ半日かけてアレを買ったんだ。任務が反対方向でな。……熱心なものだ。…南無。」
そしてこの人はソレを楽しそうに見守る。
「………悲鳴嶼さん何をしてるんですか。」
「お前と同じ事だ…気になるのだろう?」
「ま、まぁそりゃ。姉弟子と兄貴ですからねぇ。」
「そうか………本当にそれだけの理由か?」
「……いや、その…。はぁ…まあ。色々です。」
俺のはぐらかした言葉を聞いた悲鳴嶼さんは背を伸ばして1歩前へ出てからこちらを見ずに呟いた。
「……忠告しておこう。…奪うつもりは無いが、を泣かせる事は許さぬからな。」
俺はソレを唖然と見つめてから、悲鳴嶼さんの背中が小さくなった頃合で深く息を吐いた。
「……う、奪う気…あるようにしか見えねぇ…。」
ほら、この2人に勝てるわけが無い。そもそも俺は『自慢の弟弟子だよ。』だなんて言われた訳だし。
勝負も糞も無いんだ。と、諦めるしか無かった。