第37章 どうか俺の
『わ、冷たい!
あぁー…暑かったから凄く気持ち良いー…。ほら、万理も早く!』
「暗いから危ないって。頼むから、落ちてくれるなよ?」
彼女の靴を地面に置いて、携帯のライトを用意する。これでかろうじて辺りの様子が把握出来た。さすがに月明かりだけでは心許なかったが、これで少しは安心だ。これで少しは、エリの顔を見る事が叶う。
プールに入るつもりはしていなかったものの、プールサイドで涼しげに水と戯れる彼女を見ていたら 急に暑さを思い出した。
誘われるがまま、隣に腰を下ろす。それから、エリに倣って素足になって水に沈める。
「…うん、気持ち良い」
『ね。これぞプールのありがたみ』
少し身体を後ろにずらそうと、俺はプールサイドに手をついた。
しかし、俺が手を置いたその場所には…既にエリの手があった。
ふいに、2人の手が重なる。
ぴくり。と、俺だけでなく 彼女の手も小さく反応した。
ごめん!と言って、すぐに手を退ける。
確かにそうするのが自然かもしれない。でも、もう少しだけ…このままエリに触れていたかった。
また、彼女も俺の手を払う事はせず。そのままでいてくれたのだ。それを受けて、少しだけ手に力を加えてみる。
相変わらず、彼女の手は俺の手の中にあった。
どうして、許してくれるのだろう。
エリも分かっているだろう?
高校生の男女は、こんなふうに手を握り合ったりはしないんだよ。
恋人同士でも なければ。