第4章 …ねぇ。もしかして、泣いてる?
スポンサーへの挨拶回りも無事に終わる。
本当なら、本番まで集中させていてあげたいのだが…。アイドルは、実力と運だけでは登っていけない。
どんな人にも好かれる、人間力がなくてはいけない。偉い人に好まれて、選ばれて、使ってもらわないといけないのだ。
「キミがそんな顔しなくても、ボクらもそれくらい理解してる」
天の声に顔を上げる。
「あぁ。あんたは自分の仕事しろよ。で、俺達が必要なら いくらでも連れ回せ。そんなもんは、なんとも思わねえよ」
「その通りだ。そもそも君は俺達をもっと頼っても良い。なんでもかんでも1人で背負いすぎだ」
あれ、なんだろう…。
いつの間に、彼らはこんなにも私の近くにいた?
言葉にしてもいない事を理解してくれて、欲しいと思っている言葉をくれて。
こんなのは…嬉しく思わない、はずがない。
でも…彼らと馴れ合うわけにはいかない。
社長からの命令でもあるし、そもそも私達は期間限定の間柄ではないか。
私は、TRIGGERをトップアイドルに押し上げたら…。元いた会社に戻って、恩義のある社長の元で また働くと決めているのだから。
『……さぁ、そろそろリハーサルの時間ですよ。出ましょう』
特に返答をしない私の事を不思議に思ったのか、楽が言う。
「なんだよ…俺達がこれだけ言ってやってんのに。うんとかすんとか言ったらどうだ」
『………すん』
「おっま、え…!喧嘩売ってんだな?そうなんだな?」
「が、楽落ち着いて!どうどう!」
今すぐにでも私に飛びかからんという状態の楽を、龍之介がなんとか なだめすかす。